Arvinasの経口PROTACに関する報告について
この記事は創薬アドベントカレンダー2023(wet)2日目の記事です。
今回は2023年6月に公開された、Arvinasの経口吸収性のあるPROTACの分子特性を解析した論文を簡単に紹介していきます(open access)。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jmedchem.3c00740
前提は置いておきますが本論文では主に腸管の吸収過程fa×fgに着目して解析を行なっています。
fa:fraction absorbed, fg:fraction gastrically available
Arvinasのrat PKにおいてfa×fg>0.25であった化合物の分子特性は以下を示していました(Table2)。
HBD(分子内水素結合していない)≦2
HBA≦15
RB≦14
TPSA≦200
MW≦950
NAr≦5
clogP≦7
clogD≦6
さて、こんなことを書かれるとハードカットオフしちゃっていいの?っていう疑問が
みなさんの頭をよぎるかと思われます。
この指摘はごもっともで、最近構造が開示された経口IRAK4 PROTACのKT-474はMW=866を示し、上述のハードカットオフを適応すると見つけることができない化合物となっています。
The plot thickens regarding the structure of IRAK4 PROTAC KT-474 @KymeraTx. 2 patents disclosing deuterated, crystalline & salt forms of a single PROTAC. Comprising a non-conventional CRBN binder the chemists at Kymera seem to like a lot. More common NH-linked IMiD in KT-413? pic.twitter.com/O8JMRLZvpY
— Ingo Hartung (@HartungIngo) 2021年12月10日
どのような要因によってKT-474が経口投与可能かはわかりませんが、分子内水素結合などを駆使することで、経口投与可能なPROTACの分子特性スペースは変化する可能性があります。
例えば、最近中外製薬が構造開示した経口環状ペプチドであるLUNA18は
MW=1438
clogP=14.5
を示しており、上述のPROTACの経口スペースとは明らかに違う位置を占める化合物で、環状ペプチドとPROTACの違いという点で興味深い例です。
とはいいつつも上述の指標は経口PROTACを作る上で良い指標となるはずです。
皆さんも経口PROTACにチャレンジしてみませんか?