PROTACについてのよもやま話

こちらは創薬アドベントカレンダー 5日目の記事です。
adventar.org

今年はAlphafoldの話題で界隈がざわついていましたが個人的にはPROTACの年かなとも思ってます。

理由は2つ
・Arvinas社の経口化PROTACの構造が開示された
・ArvinasがER degraderであるARV-471を契約一時金$650millionでPfizerに導出
https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/arvinas-and-pfizer-announce-global-collaboration-develop

Ph1終了の化合物としては高い金額ですね。
契約の内容で一時金の額が変わるので細かいことはわかりませんが、先日Soseiが導出したM1、M4、M1/M4デュアル受容体作動薬が$100millionです。Pfizer社からのArvinasに対する期待度が伺いしれます。


ここからは備忘録も兼ねて今年の経口PROTAC関連の情報をまとめていきます。


一つ目はArvinas社の経口ER degraderとAR degrader です。
構造は以下です。

f:id:taxyach:20211204234153p:plain
どちらもE3にはCRBNを使っています。最適化が一番大変そうなLinker部分は同じ構造をしていますね。たまたまなのか、、、それとも?


二つ目は論文発表された2つの経口AR degraderについてです。
論文と構造は以下です。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jmedchem.1c00900?ref=PDF
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jmedchem.1c00882
f:id:taxyach:20211205034012p:plain
ARD-2585はArvinasのPROTACとは違うlinkerを有していますが、要素的には似ているようにも見えます。
一方、ARD-2128はArvinasと同じlinkerを有していますね。論文中にも記載がありますが、ARD-2128はArvinasの特許(US patent 10584101B2)にexamle 316として記載されております。


三つ目はC4 therapeuticsの特許(WO 2021/178920 A1)からBRD9 degraderについてです。
Compound172が経口投与可能なようです(stereoはわからない??)。
以下がその構造です。
f:id:taxyach:20211205023458p:plain
linker 部位もE3 ligandも工夫が垣間見えます。
E3 ligandについては、thalidomideやlenalidomideは溶液安定性が悪いことがあることが報告されているため、工夫されているのかもしれません。
linkerのジフルオロ基は窒素原子の塩基性の低下を狙ってのものでしょうか。


四つ目はnurix therapeuticsの特許(WO2021/113557 A1)からBTK degraderについてです。
いくつか経口投与可能な化合物があるようですが、Compound 149だけ以下に構造を示します。
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計算値を見ているとこれで本当に経口投与可能なの?っていう感じです。
hinge結合部位としてHBDを使わざるをえず、HBD数が大きいです。それに伴いTPSAが高くlogPが低いです。一方、hinge結合部位は分子内水素結合できる位置にあるため、計算値から類推される物性とは異なる可能性がありますし、剛直性も増していると予想されます。


まだ、いくつか書きたいものはあったのですが、眠くなってきたのでそろそろ終わりにします。
全体を通して見てみるとlinker 部位には3級アミンが使われる傾向にあり、logPは大きめの値をとっているように思われます。


今回はKNIMEを使って構造描画と物性値計算を行っています。
一応以下にワークフローを写真で載せておきます。
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MarvinSketchを使うのにlicenseが必要になってしまったため、代替としてCDKのStructure Sketcherを使用しています。
ただ、これが曲者で水素の数などが合わないことがあるため、注意して使う必要があります。