コクヨのリサーチラボペンを使ってみた
この記事は創薬アドベントカレンダー2023(wet)3日目の記事です。
11月コクヨから研究者向けのリサーチラボペンが発売されるとXで告知があった。
研究環境に適したアルコールで文字が消えにくい「リサーチラボペン」を発売
— コクヨ (@KOKUYO) 2023年11月7日
細いペン先で小さな文字が書きやすく、結露や凍結した容器にも筆記が可能https://t.co/R64vn7e5NH pic.twitter.com/uVsxJPUoLW
早速購入して使ってみたので感想を共有します。
価格はamazonで2本セット800円ほどで、黒と赤がラインナップされている。
使ってみた感じ非常に優秀で一人一本欲しい性能でした!
以下pros,cons
pros
・水の上からでも普通に書ける(ただし少し滲むことがあるが概ね良好)
・書いてすぐメタノールやアセトンをかけても全く消えない
・凍結面にも書けるらしい
cons
・一本400円くらいで少し高い(けど、会社のお金で買うし便利であれば価格は問題ないよね!)
・消えにくすぎて逆に消すのが大変。ガラスに書いたものを消すのにアセトンを使って指でこすっても少しあとが残ってしまい、完全に消すためにはキムワイプ等で拭く必要あり
みなさんも是非つかってみてください!
そして、コクヨさん今後もニッチな商品開発期待しています!
買うのが面倒だからはやく会社のカタログに載って欲しい逸品でした
※当方は一般的なメドケムでコクヨさんとの関わりはありません
Arvinasの経口PROTACに関する報告について
この記事は創薬アドベントカレンダー2023(wet)2日目の記事です。
今回は2023年6月に公開された、Arvinasの経口吸収性のあるPROTACの分子特性を解析した論文を簡単に紹介していきます(open access)。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jmedchem.3c00740
前提は置いておきますが本論文では主に腸管の吸収過程fa×fgに着目して解析を行なっています。
fa:fraction absorbed, fg:fraction gastrically available
Arvinasのrat PKにおいてfa×fg>0.25であった化合物の分子特性は以下を示していました(Table2)。
HBD(分子内水素結合していない)≦2
HBA≦15
RB≦14
TPSA≦200
MW≦950
NAr≦5
clogP≦7
clogD≦6
さて、こんなことを書かれるとハードカットオフしちゃっていいの?っていう疑問が
みなさんの頭をよぎるかと思われます。
この指摘はごもっともで、最近構造が開示された経口IRAK4 PROTACのKT-474はMW=866を示し、上述のハードカットオフを適応すると見つけることができない化合物となっています。
The plot thickens regarding the structure of IRAK4 PROTAC KT-474 @KymeraTx. 2 patents disclosing deuterated, crystalline & salt forms of a single PROTAC. Comprising a non-conventional CRBN binder the chemists at Kymera seem to like a lot. More common NH-linked IMiD in KT-413? pic.twitter.com/O8JMRLZvpY
— Ingo Hartung (@HartungIngo) 2021年12月10日
どのような要因によってKT-474が経口投与可能かはわかりませんが、分子内水素結合などを駆使することで、経口投与可能なPROTACの分子特性スペースは変化する可能性があります。
例えば、最近中外製薬が構造開示した経口環状ペプチドであるLUNA18は
MW=1438
clogP=14.5
を示しており、上述のPROTACの経口スペースとは明らかに違う位置を占める化合物で、環状ペプチドとPROTACの違いという点で興味深い例です。
とはいいつつも上述の指標は経口PROTACを作る上で良い指標となるはずです。
皆さんも経口PROTACにチャレンジしてみませんか?
PROTACについてのよもやま話
こちらは創薬アドベントカレンダー 5日目の記事です。
adventar.org
今年はAlphafoldの話題で界隈がざわついていましたが個人的にはPROTACの年かなとも思ってます。
理由は2つ
・Arvinas社の経口化PROTACの構造が開示された
・ArvinasがER degraderであるARV-471を契約一時金$650millionでPfizerに導出
https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/arvinas-and-pfizer-announce-global-collaboration-develop
Ph1終了の化合物としては高い金額ですね。
契約の内容で一時金の額が変わるので細かいことはわかりませんが、先日Soseiが導出したM1、M4、M1/M4デュアル受容体作動薬が$100millionです。Pfizer社からのArvinasに対する期待度が伺いしれます。
ここからは備忘録も兼ねて今年の経口PROTAC関連の情報をまとめていきます。
一つ目はArvinas社の経口ER degraderとAR degrader です。
構造は以下です。
どちらもE3にはCRBNを使っています。最適化が一番大変そうなLinker部分は同じ構造をしていますね。たまたまなのか、、、それとも?
二つ目は論文発表された2つの経口AR degraderについてです。
論文と構造は以下です。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jmedchem.1c00900?ref=PDF
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jmedchem.1c00882
ARD-2585はArvinasのPROTACとは違うlinkerを有していますが、要素的には似ているようにも見えます。
一方、ARD-2128はArvinasと同じlinkerを有していますね。論文中にも記載がありますが、ARD-2128はArvinasの特許(US patent 10584101B2)にexamle 316として記載されております。
三つ目はC4 therapeuticsの特許(WO 2021/178920 A1)からBRD9 degraderについてです。
Compound172が経口投与可能なようです(stereoはわからない??)。
以下がその構造です。
linker 部位もE3 ligandも工夫が垣間見えます。
E3 ligandについては、thalidomideやlenalidomideは溶液安定性が悪いことがあることが報告されているため、工夫されているのかもしれません。
linkerのジフルオロ基は窒素原子の塩基性の低下を狙ってのものでしょうか。
四つ目はnurix therapeuticsの特許(WO2021/113557 A1)からBTK degraderについてです。
いくつか経口投与可能な化合物があるようですが、Compound 149だけ以下に構造を示します。
計算値を見ているとこれで本当に経口投与可能なの?っていう感じです。
hinge結合部位としてHBDを使わざるをえず、HBD数が大きいです。それに伴いTPSAが高くlogPが低いです。一方、hinge結合部位は分子内水素結合できる位置にあるため、計算値から類推される物性とは異なる可能性がありますし、剛直性も増していると予想されます。
まだ、いくつか書きたいものはあったのですが、眠くなってきたのでそろそろ終わりにします。
全体を通して見てみるとlinker 部位には3級アミンが使われる傾向にあり、logPは大きめの値をとっているように思われます。
今回はKNIMEを使って構造描画と物性値計算を行っています。
一応以下にワークフローを写真で載せておきます。
MarvinSketchを使うのにlicenseが必要になってしまったため、代替としてCDKのStructure Sketcherを使用しています。
ただ、これが曲者で水素の数などが合わないことがあるため、注意して使う必要があります。